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1.手軽にファミリーでも楽しめる人気ターゲット!

沿岸の浅い砂地を中心に棲息する全長5〜20cmほどの小型のタコ。ちょうどこの時期が釣るにはベストシーズン。晩秋から冬の産卵期に向けて、メスがちょうど米粒のような形と大きさの卵を持つことから、この名があります。地方名としてコモチダコと呼ばれる地域もあります。歴史的に見ても、弥生時代に使われたと考えられるイイダコ専用の蛸壺が出土するなど、かなり昔からイイダコの存在が知られていて、しかも食用として利用されていたと考えられます。

さて、釣りのターゲットとしては、姿がユーモラスでかわいらしく、また数を釣ろうとするなら釣りの奥深さもあり、人気を博しています。シロギスのボート釣りの外道としてかかってくることも多いのですが、専門に狙うなら船釣りに限るでしょう。使う道具もシンプルで、ファミリーでも十分に楽しめる釣りです。また料理も簡単で、パスタやおでんの具としても最高。釣って楽しく、食べて美味しいというダブルの楽しみ方ができてしまうことが嬉しいですね。

では、イイダコの生態面を参考にして、さっそく実際の釣りに役立ててみることにしましょう。

本来は夜行性。日中でもどこからか様子見する

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基本的にタコの仲間は夜行性。夜になると、昼間隠れていた場所からはいだして、周辺をうろつきながらエサとなるエビ、カニ、貝類などを捕食する。

イイダコなど、タコの仲間は本来夜行性です。これは、タコの仲間が大好物としているエビやカニが夜行性であることと関係しています。エビやカニ類は、日中は外敵に見つかりやすく、岩陰などに潜んでジッとしています。そして夜が来て、サカナたちが眠ってしまうと、そこからはいだしてきて、エサをとったりしているのです。そんなエビ・カニ類の生態にあわせて、タコたちも夜はさかんに活動し、広範囲を散策しながらエサを捕食しています。夜間はタコたちにとっても、エソやコチなどが寝ているため、かなり無敵状態で捕食活動に専念します。

だからといって、イイダコも日中はまったくエサをとらず、寝てばっかりいるわけでもありません。もしも日中はまったく活動しないのであれば、夜釣り限定のターゲットということになってしまうわけですから。

空き缶の中や貝殻の間に隠れていたり、岩の隙間にはいっていたり、時には砂の中に潜っていることもあるようです。そのようにして、辺りに注意をはらい、なにか捕食できそうなものがいれば捕食しますし、外敵がいれば隠れたままです。いずれにしても、日中はどこかに潜んでいるということを頭に入れて置いてください。

テンヤを動かして、イイダコをいらつかせるのがコツ

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海底に点在している岩の隙間などに巧妙に隠れ、日中は辺りを監視している。なにか見つけると、それがエサと思われれば、這い出して触るなどの行動をとる。

海の中で白い色をしたものは目立ちます。イイダコ釣りで使うテンヤは、そもそも白い球体のものがついていたり、ラッキョウを使うのも、白く目立つということに関係しています。エサがラッキョウだからといって、ラッキョウが好物な生き物というわけではありません。この白いものがコトコトと海底で動いていると、イイダコにとっては興味をそそり、ついつい触ってしまったり、抱きついてしまう行動を引き起こします。この行動を引き起こさせることが釣果につながるのです。

だからといって、テンヤが飛び上がるような大きなアクションは、かえって逆効果。もともと臆病な生き物ですから、大きなアクションは禁物でしょう。コトコトと細かく振動しながら、船が潮や風で流されて移動する。するとテンヤは、イイダコサイドから見れば、白く目立つ不思議な移動物体でしょう。臆病だけれど好奇心旺盛なイイダコにしてみると、スッと腕を伸ばして触れたくなります。タコの仲間の眼は、物の形などを正確に判断できるほどの能力があると考えられていて、テンヤの形もボクたちが想像している以上に正確に判断しているようです。

この移動するテンヤが、タコにとって何と間違えるように見えているのかはわかりません。好物の貝に見えているという説もあれば、カニに見えているという説もあります。ですが、形を正確に判断しているとすれば、ボクには貝やカニと誤認しているとは思えません。

なんか不思議な生き物のようだけど、喰えるものなのか、喰えないものなのか確かめてみよう。喰えるものなら、まちがいなく力でねじ伏せられそうな気がする。しかし、あの小刻みに振動しながら滑るように動いていく不思議な物体はイライラさせられるなぁ…。そんな気持ちをイイダコに対して引き起こさせているような気がします。だから実際に触って、さらに抱きついてくるということになるのだとボクは考えています。

慣れると、テンヤに触った感触までわかるようになる

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これは海に捨てられて沈んだ牛乳瓶に住み着いた。こんなケースもある。タコの仲間は、天然の岩以外にも、空き缶、空き瓶、その他をうまく棲家に利用する。

イカ釣りなどではよく言われているイカパンチ。スッテやエギに対して、イカが触手を伸ばして触ってくる行動を釣り人の間ではこのように言っています。イカの場合は、エサを捕食するためにその触手を瞬間的に伸ばすので、パンチのような強い触り方になります。ですが、イイダコの場合は、腕を細長くして伸ばし、その先端でまさにタッチしてきます。イカのような金属的なタッチではなく、軽くからみつくような、ヌメッとした、それでいて重さのない感触。そんな感じが竿から伝わってくると、それがイイダコのタッチングです。

そんなときは小突きをやめて、ミチ糸を張ったままわずかに待つと、重みが伝わってきます。このときこそ、イイダコがテンヤに乗って、抱きついてきた瞬間です。鋭くアワセれば、テンヤのハリにかかり、イイダコ、ゲットということになるわけです。

この釣りは入門しやすく、しかも多いか少ないかはその人の努力次第ですが、ほぼ必ずおみやげがあるというのは魅力的です。ぜひ一度試してみてください。

※釣魚水中生態学入門より移設