イナダ(ハマチ)・ワラサ(メジロ) FISH WORLD トップへ

1.まだ生態の全ては判っていない?

「出世魚」とはよく言ったものだ。生まれてしばらくして流れ藻と一緒に海流に乗って旅する「モジャコ、全長20cmぐらいをワカシ(ツバス)、全長30〜40cmぐらいをイナダ(ハマチ)、50〜60cmぐらいをワラサ(メジロ)、70cm以上をブリ」と、大きさによって呼び名が変わる。また、同じ関東でも場所によって基準が違うようで、伊豆半島と三浦半島ではイナダ(ハマチ)とワラサ(メジロ)の大きさが若干異なり、伊豆半島でのワラサ(メジロ)の方が三浦半島のものよりも大きい。前述は関東式(関西式)の呼び名であり、北陸、四国や九州では、その土地土地で呼び名が異なる。他にもボラやスズキ、クロダイ、カンパチなども出世魚、それだけボクたちの生活と密着したサカナであると言えるだろう。

1)まだ生態的によく判っていない部分もある

ブリというと、養殖物を「ハマチ」といい、すし屋や魚屋などでも一般的な名だ。養殖されてきたからには、卵から孵して大きく飼育されているように思われがちだが、実際にはモジャコを捕獲し、いわゆるこの稚魚を生簀で育てて、ある程度の大きさにして出荷するというのが養殖業のスタイル。つまり、まだ正確には、いつどこで産卵が行なわれているのかはよくわかっていない。

一応、九州南方海上で4月頃に産卵すると考えられている。5月頃にモジャコが九州で漁獲され、稚魚として全国の養殖業者に売り分けられる。天然物は黒潮に乗って、九州南で黒潮本流と対馬海流に二分され、太平洋側と日本海側に分かれて、それぞれで大きく育っていくと言われている。

ただ、このブリの生態は、学説的にこういわれているだけであって、誰かがきちんと確認している話ではない。ボクなんかは、ブリが北海道南岸まで生息していて、彼らが産卵期だからといって、わざわざ九州南方まで全員が南下して産卵するとは到底思えない。もちろん、メインの産卵地は九州南方海上かもしれないが、かなり各地で小規模なりの産卵が適宜に行なわれているのではないかと思っている(これまた何も確証のない話だが…)。

2)イナダ(ハマチ)、ワラサ(メジロ)は群れで行動する

イナダ(ハマチ)、ワラサ(メジロ)はとかく群れで行動する。群れで行動するには、なんらかの理由があるようだ。例えばフィッシュイーターたちに食べられる側のサカナとして有名なイワシなどは、群れで固まることで敵から見つかりにくくすること、見つかった場合に密集して群れの中の自分が捕食されにくくする効果があると考えられている。捕食する側として群れる理由は、群れで行動してみんなでエサを見つけ合えば、エサを見つけやすくできること、また群れの中の一尾だけが食いそびれることを防ぐものと考えられる。

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イナダ(ハマチ)は、ワラサ(メジロ)よりもさらに密度の濃い群れを形成する。ただ行動はアジの群れに若干似ていて、コマセに群がることも多い。サビキやカブラを使った「かったくり」などが有効である。
ワラサ(メジロ)も基本的には群れで行動する。回遊スピードは速く、自分のコマセだけで群れの動きを止めることは難しい。タナをしっかり取って、群れが付けエサを泳ぎながら捕食できるようにすることが大切。
ブリクラスとなると、単独または数尾で行動することも多くなる。それだけエサの捕食に自信がでてきた証拠であり、またこれだけの大きさになると、群れることで逆にエサの捕食の確率が低くなる可能性も考えられる。

また、群れの形成も捕食される側と捕食する側とではかなり異なる。捕食される側のイワシやアジなどは大きなボール状になることが多い。だが、捕食する側は、群れは帯状になって行動することが多い。つまり、泳ぐ層が定まっていることになる。

群れで行動するサカナを釣ろうとする場合、群れの存在を知る必要がある。これは、魚群探知機を見ながら操船する船頭の役目。だが、船頭の操船と釣果とを結び付けるには、釣り人側の準備が肝心だ。船頭の合図で仕掛けを投入するわけだが、コマセを詰めておいたり、仕掛けがいつでも投入できる態勢をとつておくことは大切なこと。

また投入がスムーズに行くように、邪魔なものはきちんと整理しておくことも重要だろう。仕掛けがどこかに引っかかったり、コマセを慌てて詰めたりなど、モタモタしていると群れはあっという間に通り過ぎてしまう。

よく群れをコマセで止めるというが、実際には釣り場に数多くの船がいて、自分たちのコマセで群れを止めて釣り続けることは難しい。ほんの一瞬群れがとどまるか、回遊のスピードが若干落ちるかというぐらい。

つまり、船頭の「投入」の合図できちんと仕掛けを入れ、すばやく指示されたタナに仕掛けを安定させることが釣果を決定する要素となる。特にタナに関しては、イナダ(ハマチ)やワラサ(メジロ)の泳ぐ層から外れてしまうと、群れの一部が群れから外れて、そこにいくことはほとんどありえない。当たり前の話のように聞こえるが、この釣りではタナを正確に取ることが釣果の決め手とも言えるだろう。

また、ワラサ(メジロ)狙いなどでは、付けエサにイカの短冊を付けたりする。これはエサを目立たせる効果があり、群れが回遊中にエサを視認して泳ぎながら捕食する可能性は確かに高くなるはずだ。

今年は、どうやらイナダ(ハマチ)の調子は良いようだ。また、伊豆半島のダイビング情報でもイナダ(ハマチ)やワラサ(メジロ)の群れと遭遇したという情報もいくつも入ってきている。黒潮が接岸していることもあって、海水温も安定している。だから伊豆・網代周辺の海水浴場でハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)が出没したりもしているのだ。このままいけば、今年の秋はワラサ(メジロ)フィーバーとなりそうである。

※釣魚考撮より移設