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1.群れはかなり速いスピードで移動する!

夏の産卵期を前に比較的簡単に喰ってくることが多い。しかもビギナーにも釣りやすい。そしてなんといっても、お刺身、たたき、塩焼き、煮付けなど、料理してもとてもおいしい。イサキは船釣りの入門ターゲットとして、まさにうってつけのサカナです。

ただ、海の中でどのような行動をしているのかは、なかなか見ることができません。5〜10cmほどのイサキの幼魚は、大きな根に、それこそ何十万尾とか何百万尾という数の群れでついていることは比較的海の中でも見られるのですが、成魚の群れはなかなか出会えないという不思議な現象もあります。わかっていそうで、海中目撃例のあまり多くない謎多きサカナなのです。でも、何度か目撃したイサキ成魚の群れの行動から推測気味に考えると、いろいろなことがかなり高い精度で見えてきます。

素早く泳げる磯魚としてのイサキの存在

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イサキはごくごくポピュラーなサカナでありながら、幼魚の海中目撃例は非常に多いのに、成魚の目撃例は極端に少なくなります。それだけ実際の生態が不明なサカナとも言えるでしょう。

イサキの体つきを見てみると、どういう生態のサカナなのかがわかります、紡錘形のスマートな体形で、ウロコもしっかりとある。これは磯魚でありながら、「根つき」でいるよりも「回遊性」を持ったサカナといえます。

しかも、磯魚といっても、メジナやクロダイのようにはウロコが鎧のようにがさがさと大きくありません。細かいウロコがびっしりとあるということは、泳ぐスピードを得るために磯魚の中でもウロコを小さくして水の抵抗を減らす進化を遂げたものと考えられます。スピードの究極は、カツオやマグロのようにウロコが退化してしまう方向なのですが、磯に棲むにはウロコがないとすぐにカラダが傷ついてしまいます。水温の変化にも弱くなってしまいますし、皮膚の病気などにもかかりやすくなってしまいます。かなり素早く泳げて捕食魚から逃れられ、磯やサラシなどで生き得る磯魚としての存在。その辺のバランスを考えたカラダつきをして生活しているのがイサキといえるでしょう。

大きな群れを作り、移動する

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特にイサキ成魚の群れはなかなか海中では出遭えません。三浦半島城ヶ島沖で出遭ったイサキの群れは、足早に目の前を通過していきました。その日のサカナの気分次第なのでしょうが、群れを引き止めるテクニックも必要そうです。

イサキの生態の特性として、群れで生活することがあげられます。イサキはある程度のスピードで泳げるとはいえ、カンパチやヒラマサ、ブリにはかないません。高速で泳げる捕食魚からはどうしてもスピードでは逃れることができません。またハタやサメ、その他の大型捕食魚から身を守るため、群れを作ります。

なぜイサキやアジ、イワシといった弱いサカナが群れを作るかというのにはいろいろな説があります。寄り集まることで大きな物体として相手に見せる。1尾1尾がある海域にばらばらにいるよりも、密度濃くいた方が捕食魚に確率的に出遭いにくいなど。しかし、捕食魚は群れで固まっている中に突進して群れを崩し、統制が乱れたものを喰いあさることを日常茶飯事のようにやっています。これらの事実から、どうもこれらの説の真実味は薄いように感じます。これは個としての1尾のサカナを大切にするというより、種を残すという意味で群れで生活し、何尾かは必ず喰われるけど、その犠牲の元に必ず生き残れるものがいるという理屈の方が信頼性は高いように思います。

イサキはそんな弱い立場のサカナであり、なんとか種を残して行くために群れで行動しています。ただ群れで行動するサカナとしては、積極的に群れは移動します。移動しながら、潮に乗って流されてくるプランクトンやアミ類、イソメ類を捕食します。それらが溜まるような場所を見つけた場合はそこにしばらくとどまることはあっても、ほとんどの場合群れは移動し続けます。

とくに船釣りで、移動の足の早いイサキの群れを船頭が追いかけているときは、船頭の合図とともに仕掛けを入れても、仕掛けを沈めた時にはイサキの群れはほとんど通過してしまっていて釣れないという事態が起こります。そんなときは他の群れも移動しているので、釣れないスパイラルに陥ってしまうこともよくあります。

なかなかヒットしないときの奥の手

イサキ釣りは、多くの場合ビシにコマセをいれ、ハリにオキアミを刺して狙う。喰いの悪い時は誘いかけたり、ウイリー仕掛けに切り替えてシャクリながら狙ったりします。きちんと誘いをかけたり、またウイリーのシャクリにもそれなりにテクニックは必要です。

ですが、そんなときに初心者にも簡単に出来て意外な効果を示すのが、エサをアオイソメにすること。イサキ釣りのときの特エサとして、青イソメを1パック用意しておくといい場合がよくあります。

きちんと船頭の指示ダナにあわせて、軽くビシをシャクって、あとは置き竿。おそらくハリに刺した青イソメはフラメンコダンスを踊っているのでしょう。イソメが潮の中を蠢きながら流れてくるのは、イサキにとってはどうしても我慢できないようです。他の人が釣れないのに、自分だけヒットするというケースが多々起こりえます。ぜひお試しを。

イサキが移動しないとき

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日中、根がオーバーハングした暗がりで、昼寝していたイサキ成魚の群れを見つけました。潮が止まって活性が落ちた時なのでしょうが、昼寝には少々驚きです。近寄ってもしばらく逃げなかったところをみると、かなり熟睡モードだったようです。

イサキも移動し続ければ、必ず疲れます。まずやはり夜は寝るようです。この姿はまだ実際には見たことはないのですが、群れを密集させてさらに密度の濃い群れを作って休むようです。ただイサキも夜釣りのターゲット。寝ているとはいっても熟睡はせず、エサが眼の前に流れてくれば喰います。

さすがに夜間は視界もきかないので、大幅な動きはしません。だから、例えば磯の夜釣りなどでは、同じタナに、一度釣れたのと同じアプローチの仕方で仕掛けを流すと、次から次へとかかってきます。

また、日中も潮がたるんだ時などは休むようです。3年ほど前に、南紀白浜を潜ったときに、日中だったのですがイサキの群れが昼寝している場面に遭遇しました。ちょうど岩が海底から大きく立ち上がり、その岩と岩の隙間の暗がりで休んでいました。休むといっても、海底にベタッと横になるのではなく、海中を泳ぐでも浮くでも沈むでもないという、微妙な体勢で休んでいました。しばらくボクの接近に気づかないほど、意識は睡眠に近かったようです。さすがに手が届くほどに接近した時にイサキも気づいて、群れは大混乱にも至らず、静かに去っていきました。でも、イサキも昼寝をすることが確かであることは知ることができました。

※釣魚水中生態学入門より移設