シロギス FISH WORLD トップへ

2.最もポピュラーな海釣り入門魚。しかし、この釣りの奥は深い!

海釣りを始めたいという場合、入門魚としてポピュラーなのは、アジ、そしてシロギス。どちらも堤防でも釣れますし、手漕ぎボートでも狙えます。さらに本格的なのは船釣り。ファミリーでも十分に楽しめることうけあいですね。

このシーズンなら、ボウズはよほどのことがないかぎりありませんし、うまくすれば初心者でもつぬけ(10尾を超えること。ひとつふたつと、数える場合「つ」の文字がつきますが、10を超えると「つ」の文字がなくなることに由来しています)できることも多くあります。おまけに釣ったサカナを料理する場合、どちらも簡単においしくいただけます。 今回は、シーズン突入するシロギスについていろいろと考えてみようと思います。

下側に「ろうと状」に伸びる口で捕食します

地球上の生き物は、その生き物の生態に則したカラダの構造になっています。例えば極端な例を示しますと、木の高い部分の葉っぱを食べるためにキリンは首が長くなるというカラダ上の進化を遂げました。地面に生える草や低い木の葉っぱは、他にもそれを食べる動物が多く、キリンは競争のほとんどない高い木の葉を食べることでエサの確保の道を選んだのです。

そのような見方をすると、サカナの世界もうまくエサがかちあわないような生態に分化しています。小魚をスピードで上回って捕食するために、カツオは抵抗となるウロコを脱ぎ捨て、瞬発力の出る赤い色の筋肉の持ち主。ジッと海底に潜んで目の前にエサが泳いでくるのを待つヒラメは、体色も海底の色に似せられますし、噛みついて一撃でしとめるための鋭い歯を持っています。

シロギスの場合は、海底の砂や砂泥に潜むイソメやゴカイ類、小さなエビやカニなどを食べやすいように、口が下斜め前方に伸びる「ろうと状」の口になっています。カラダを逆立ちさせなくても、まるで掃除機の吸い込み口のような構造で、砂と海水を一緒に吸い込みます。エラでそれを濾して、砂と海水はエラから吐き出します。

また、大好物のイソメやゴカイ類を見つければ、素早く吸い込み、口で軽く噛みながら飲み込みます。このようにして食べているんですね。

30尾ほどの群れを形成して回遊します

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シロギスは、ヨブと呼ばれる砂地や砂泥底のくぼみにいることが多い。ちょうど潮の流れによって、吹き溜まりとなるのか、そこに潮の流れによってエサが多く集められるのではないかと考えられます。
シロギスは、日中、10〜30尾ほどの群れを作って回遊します。捕食のための回遊なのですが、単に移動するだけの場合は、かなり早いスピードで泳ぎまわります。エサを見つけると、そこにとどまって捕食します。

シロギスは、もちろん単独で行動する場合もありますが、やはりそれでは外敵に狙われやすいため、群れを作ることをよくします。とはいっても、大きな群れではなく、たいてい10尾から30尾ほどの群れで行動します。

そのことによって、群れにはたくさんの目が存在することになります。群れの中の1尾がなにか外敵を発見した場合は、なんらかのメッセージを発しているかまではわかりませんが、仲間はそのことで緊張し、警戒します。昔、1尾のアオリイカがシロギスを狙ってその群れに接近したのですが、その中の1尾が接近に気づき、そのことで群れ全体が警戒し、アオリイカはイカパンチの触手を伸ばしたものの、簡単に避けられてしまった場面を目撃したこともあります。

また、シロギスはエサを求めて徘徊するようなスタイルで回遊します。その回遊も、潮の流れをどのように察知しているのかは不明ですが、潮が止まると活性は落ち、潮が動くと活発に回遊します。

あと、よくヨブと呼ばれる海底のくぼみに集まると言われますが、海に潜って観察するとたしかにいます。

特に砂地や砂泥の海底は、砂紋といって、おそらく波によって作られる海岸線に対して平行となるような段々の模様があります。投げ釣りで仕掛けを引いてくると、ガタンゴトンという感触や、ジワリと重くなる感じの後に軽くなるのは、この砂紋の影響です。その砂紋が作られる過程でできるのか、ちょうど月の表面のクレータのような形をしたくぼ地がいくつもできます。たぶん波や潮の流れの関係なので、そういったところにはエサがたまりやすいのかもしれません。それを経験的にシロギスたちは知っていて、そういった場所を好んで捕食するということは十分に考えられる話です。

冬は深場に落ちます

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薄暗くなると単独行動が多くなります。夜釣りのアナゴ釣りの外道でシロギスが釣れてくる場合も、同じ場所に仕掛けを入れても、何尾も釣れないことが多いのは、このことが原因と考えられます。

夏から秋へと積極的にエサを喰ったシロギスは、冬場は水深50メートル以上深い場所へと移動します。おそらく水温変化が少なく、また大きく移動しないためにエネルギーも温存できるのかもしれませんね。ただ、この時期はシロギス釣りファンにはこたえられない楽しみがあります。深場に落ちたシロギスは、活性が落ちて、喰いは極端に渋くなります。また釣れると良型がほとんどなので、ヒキも強く、また食いでもあるというものです。

ビギナーとベテランとでは、釣果も1対100ぐらいの大差がつく釣りであり、経験と勘に加え、敏感な穂先をもつ専用ロッドなど、道具にもそれなりに投資が必要なようです。

ヒキの強いキスということであれば、沖縄にはホシギスとモトギスというキスがいて、どちらもシロギスによく似ています。ホシギスの方が多く釣れるのですが、そのヒキたるや本当にこいつがキスのヒキかと誰もが驚くはずです。スピニングリールのドラッグは、いとも簡単に逆転してミチ糸が引き出されます。

さらに輪をかけてヒキが強いのは、やはりオーストラリアにいるキングジョージホワイティングでしょう。ボクも60センチまでは釣りましたが、なんと1メートル級がいるというのです。ぽつぽつとした斑点が体表にありますが、シロギスの化け物みたいなサカナです。釣った60センチクラスで、一緒に釣れたタイと同じぐらいのヒキでしたから、1メートルクラスとなったらどうなることか…。夢が膨らみますね。

※釣魚水中生態学入門より移設