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1.海のサカナの原型?

20年ぐらい前は「スズキ」というと、船釣りか堤防の夜釣りというのが一般的な釣り方だった。船ではエビエサ、堤防の夜釣りでは大きな電気ウキとハリには青イソメの房がけというのが特徴だった。魚を掛けてからのファイトが派手で、水面からジャンプして首を振る、いわゆる「エラ洗い」は豪快で、昔からスズキ釣りには根強いファンが多かった。時代は変わり、ソルトルアーが広がるにつれ、「シーバス」という愛称でこのサカナの人気は沸騰し、一気に日本全国にこの釣りのファンが急増した。

1)原始的な喰い方で、ハンティングは下手くそ

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スズキは、見た目も均整が取れていて美しいサカナだと思う。だが、魚類の分類から考えると、スズキはサカナの祖先的な存在。進化という見方からすると、かなり原始的といえる。

スズキというサカナを魚類の分類という目で見ていくと、魚類の原型という考え方となる。サカナの図鑑を見ると、相当数のサカナたちがスズキ目となっている。

スズキ目のサカナは、深海、浅海、河口、淡水とそれぞれ棲むエリアに広がっていき、そこで生きるためのそれぞれの進化を果たし、形態や特徴を変化させていった。その結果がいろいろな科に分かれていったという分類となっている。

ちなみに、地球には淡水海水合わせて25,000〜30,000種の魚類が棲んでいるとされ、そのうちの9000種がスズキ目に属するとされている。スズキ目に入れられていなかったカレイ目とフグ目も、研究の結果としてスズキ目に近いという考え方が主流になりつつあるという。

前述の全体の種数はサメやエイなども含まれた数字であり、それらを除けば深海から淡水に棲むサカナたちであっても、スズキが祖先であるサカナが半数以上を占めるといっても言い過ぎではなかろう。

スズキの特徴である「荒く大きなウロコ」「大きな口」というのは、まさにサカナの祖先的要素。

例えば、ウロコは自分たちのカラダを守ったり、水温から身を守るためのものと考えられている。水温変化の大きい浅い海に棲み、しかも淡水域にまで入り込むためには、やはりしっかりとしたウロコで武装する必要があるのだろう。ただこの鎧は身を守るのに役立っても、すばやく動き回るにはそれなりの抵抗となってしまっている。同じスズキ目の中でも、ヒラマサやカンパチ、ブリといったサカナたちは、小魚よりも速く泳ぐというスピードを得るために、このウロコを細かくすることによって泳ぐ抵抗を減らしている。

さらにこの部分での進化といえば、同じスズキ目の中のカツオやマグロたち。さらに高速で泳ぐことを可能にするためにウロコは退化し、ごく一部にウロコが残るのみという(レーシングカーの)F-1さながらの空体力学(サカナの場合は水力?)を突きつめたようなカラダを勝ち得ている。

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ソルトルアーの世界では、シーバスの人気は相当なもの。ところが最近、その人気を二分するライバルとしてエギのアオリイカが急進した。

またスズキの特徴でもある大きな口は、ガバッと口を開けて、海水ごとエサを吸い込む喰い方となる。前出のヒラマサ、カンパチ、ブリ、カツオ、マグロなどは、スズキと同じフィッシュイーターでありながら、高速で泳ぎ、エサよりも速く泳ぐことで捕食の可能性を高めた進化したサカナなのだ。

一方、スズキは不器用ながらも口を大きく開けて小魚を吸い込んで捕食する。ボクの見解としては、スズキというサカナは、恐らくサカナの中で捕食は下手くそな方であり、かなりトライアンドエラーを繰り返しながら生きているのではないかと考えられるのである。

ただ、その方面で進化を得られなかったのは、まだ進化の過程途中なのか、進化しなくても取りあえず生きていかれるという自信の表れからなのだろうか?

2)だから、ルアースピードはスローなのだ

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ルアーに関して言えば、スローなスピードでもよく泳ぐルアー。アクションについては、スローでもスズキに対してアピール度の高いものが有効と考えられる。

例えばジギングなどで考えると、カンパチやイナダ狙いは、ファストリトリーブ、ジャーキングとフォーリングを繰り返すなど、スピード的には速いリーリングとアクションでのジギングとなる。

ところが、スズキの場合のジギングでは、スピードに関してはスロー。またミノーイングでもあまりにも速いリトリーブではなかなかヒットしない。これは前述のように、カツオのようにはスピードも小回りもきかず、ガバッと大きな口を開いて捕食という不器用な一面が原因と考えられる。

だから、有効なルアーやルアーアクションというのは、ゆっくり引いてもルアーアクションが大きく、スズキに対してのアピール度の高いものが求められる。ルアーは低速でもよく泳ぐものが適していて、アクションとしてはミノーイングならトゥイッチングみたいなアクションが適していると言えるだろう。

3)小魚の群れと移動する?

昨年の夏、台風の影響でイワシや小サバの群れが東京湾奥まで入り、葛西や浦安でもその群れを追ってきたイナダが釣れ続いた。イナダは比較的浅い層で喰ってきて、ジグなどでやや深めの層を狙うと地付きはもちろんのこと沖から入ってきたと思われる銀ピカ魚体のスズキやその若魚であるフッコが釣れた。

イワシや小サバの群れが沖に出てもしばらくはスズキは浦安周辺でも釣れたのだが、12月の中旬に友人の小船に乗せてもらって釣りにいったときは、川崎沖では釣れたものの、浦安や葛西周辺では、地付きすらまったく釣れないということがあった。

産卵のために深場に落ちたか(?)、沖の東京湾湾口部へといったのか(?)、その理由は正確にはわからない。捕食の不器用なスズキたちが、少しでも確率高く捕食するために、小魚の群れに付き、腹が減ったらその群れに突入して喰いつなぐ。生きていくためには、彼らなりにも人知れずかなり苦労があるのかもしれない。

※釣魚考撮より移設