オフショアゲームをたしなむアングラーなら、スローピッチジャークもしくはスロージギングと呼ばれる釣りが、全国的なブームになっているのをご存じのはず。
もともとは関西で10年以上も前に始められたものが、ここにきてようやく広く認知され、急速に普及する途上にあるようだ。どんな釣りも伝播する過程で少しずつアレンジされ、それぞれのフィールドに合ったスタイルに進化していくのが常。
しかし、このゲームの場合はまず呼び名が統一されてないことからも分かるように、ターゲットやタックル、釣り方などがバラバラで、かなり混乱した状態にあるといって間違いない。
中には、スロー=根魚釣りと捉えている人もいるし、従来のジギングをそのままゆっくり行うものと思っている人もいる。また、ショアフィッシングと違って、オフショアの場合はガイドである船長が必要。仮にアングラーが正しく認識していても、受け入れサイドである船宿がそうでなければ、当然問題が出てくる。
「船にもよりますが、スピニングタックルの通常のジギンガーとスローピッチジャークのアングラーが同船するケースがまだ多いですね。要するにどちらもできますということです。ただ、スローピッチは完全なバーチカルの釣りなのでスパンカーを使って船を立てた方がやりやすい。でもスピニングはドテラ流しでラインが斜めになったほうが釣りやすい。どちらにするかはその日の人数によって、多いほうに統一する場合もあるようです」と語るのは千葉県銚子エリアをホームグラウンドとする栗山佳尚。
では、本場の関西ではどうなのかというと、「日本海では朝はハマチ、夕方はブリ、潮が止まったら根魚やマダイ、と一日で何魚種も狙うことが多いので、お客さんはどんなターゲットにも対応できるよう1人で数組のタックルを持ち込みます。そのうちの1本がスローピッチ用で、これでインチクやタイラバまでこなす人が多いです」とは吉田匡克。本来、釣りは本人のやりたいように楽しめばよく、正解なんてものは存在しないのかもしれないが、混乱を避けるにはある程度ルールを設ける必要がある。
ダイワが考えるこの釣りの概念は次の通り。呼び方は本家である関西に倣ってスローピッチジャークとする。タックルは高弾性のロッドとベイトリール、それに専用タイプのメタルジグを使用すること。ライトラインによるライトタックルゲームということから、ベイジギングというカテゴリーの中の1ジャンルと位置付ける。
□ | スローピッチジャーク釣法解説 |
□ | ロングフォール釣法解説 |
釣り方も従来のジギングと比べると少々特殊。ジグを投入しボトムもしくはベイト反応のあるタナまで沈めたら、クラッチを入れて瞬間的にリールを巻く。すると竿先に荷重が掛かってクンと曲がる。曲がったら当然反発力が働いて元に戻るわけだが、その時の反発力でジグを飛ばし、横を向かせる。
スローテーパーで反発力の強い高弾性ロッドを使うのはこのため。基本的にロッドを激しくジャーキングさせる必要はなく、なるべく水面と平行にして、ラインと直角になるようしっかり保持することが重要。
ダイワ推奨タックルは、ロッドがソルティガBJ AGS64B-3、リールがリョウガBJ 2025PESHにラインはPE1.5号。ジグはソルティガサクリファイス スローナックル。
通常、高弾性ロッドは反発力が強いが、曲げすぎると折れる可能性が高いというのが通説。しかし、Xトルク、3DXといったテクノロジーを搭載したソルティガBJ AGS64B-3なら、ジグを弾き飛ばす反発力を持ちながらも、魚が掛かったら従来通り思いっきり竿を曲げてのファイトを展開することができる。
まずはハンドル1回転のリズムから始め、慣れてきたら1/2、1/3、1/4と順に細かく刻めるように練習する。ハンドル1回転の巻き取り長さを80cmとすると、1/4回転は20cm。わずか20cm程度のリトリーブでジグを真横に向かせることができれば、スレたターゲットはもちろん、それまでジグにまったく反応しなかった魚までもがアタックするようになる。
ボトム周辺を重点的に探れば根魚類のオンパレードとなる。この釣りを根魚釣りと思っている人が多いのはこのためだ。
しかし、宙層を狙えばブリやカンパチなどの青物、マダイのほか、ポイントによってはアマダイやイトヨリなど、これまでルアーではまず釣れなかった魚も狙えるようになり、ターゲットは格段に広がった。
また、従来のジギングはパワーとスピード、つまりアングラーのテクニックというより体力が大きくものをいう傾向があった。しかし、スローピッチジャークの場合、体力的にという意味では女性や子供、シルバー世代でも十分ジグをアクションさせることができる。
むしろ重要なのは力ではなく、使用するジグの特性を把握し、水深や潮の流れを計算に入れて、いかに効果的にジグを動かせるかという頭脳的なテクニックと経験。その意味では、幅広い年齢層に楽しんでもらえる敷居の低いゲームといえるだろう。
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