白滝治郎といえば、アマゴ釣りの銘河川、長良川で育ち、伝統的な郡上釣りから最新のゼロ釣法まで渓流釣りにおける歴史の変化を最も身近に見てきた一人。 「ここ最近、本流でのアマゴやサツキが注目されていますが、実は長良川には支流も多く、そこには綺麗なアマゴが沢山生息しています。ここ数年、全国的にもそんな渓流域のヤマメ・アマゴが増えてきているようです。」 そんな白滝が近年注目しているのが、従来よりも少ししなやかな抜調子渓流竿を使用した“テクニカルチューン(以下、TT)釣法”だ。 「特別なテクニックは一切必要とせず、今まで以上の釣果と面白さを備えているのが“TT釣法”です。」 では、白滝が考える“TT釣法”とは? |
「流覇III」で初登場したTT調子は、琥珀調子ともいわれる「抜調子」とゼロロッドの柔軟さが融合され、繊細に渓魚を掛け、大胆に取り込むことを可能にした画期的な渓流竿です。
そして今シーズン、より深く楽しめる専用ロッドとしてシリーズ化されたのが、「EP テクニカルチューン」。張りのある抜調子は通常の渓流竿を使用していた釣り人にも違和感なく、ゼロ釣法がメインの方には、一味違った操作性が新鮮だと思います。私の考える“TT釣法”とは「特別にこれまでの渓流釣りと違ったテクニックやノウハウではなく、仕掛けを少し細身・軽量化し、それに合わせたロッドを選びさえすれば、今まで通りのメソッドで飛躍的に釣果アップが図れる。」という極めてシンプルなものなのです。
渓流釣りで釣果をあげるためには、まず渓魚が付いているポイントを見つけなければなりません。渓魚は流下するエサの集まりやすい流れの一部分に定位しています。
ゼロ釣法の創始者である伊藤稔さんは、渓魚が付いているポイントの流れをYパターン、ICパターンという呼び方で分かりやすく解説してくれています(図1・図2)。
一方で、川の水量や渓相により川底の流れは複雑に変化します。特に水深のある淵などでは川底へと引き込む流れ・女波や水面へと吹き上がる流れ・男波が複雑に絡み合って流れています(図3)。こんなポイントでは渓魚は男波の手前にできる水障部(受け)に定位していることが多いものです。
効率的に釣るためには流れの変化を読み取りながら仕掛けの投入点を見極め、仕掛けを流れに乗せてやる必要があります。これらの操作を容易にするのが細糸仕掛けと竿の振り込み性能です。
「EP テクニカルチューン」は従来よりも少し細い0.125〜0.2号を常用範囲として開発されています。私は伸びが少なくてスレに強いフロロの0.125〜0.175号を中心に、喰いが悪い時にはナイロンの0.1号まで使用しますが、十分に対応してくれます。
細糸は水流による抵抗を少なくし、速やかに川底へと仕掛けを沈めることができるので、その分オモリも軽くでき、より自然に餌を流すことができます。また、振り込みも小継をベースとして開発されたことで、従来の渓流竿感覚でピンポイントへの打ち込みが可能です。
結果、いまひとつだった喰い込みという点でも優れた性能を持つ竿に仕上がったのです。
従来の渓流釣りのフィールドである、ある程度落差のある渓流相でこそ、川を読み細糸を駆使する“TT釣法”が絶大な威力を発揮するフィールドです。
流れの変化によって魚の付く位置が変化すれば、仕掛けを投入する位置も、Aの魚を釣るにはa、Bの魚を釣るにはbへと変えなければならない。
「EP テクニカルチューン」のもう一つの突出した性能は抜き性能。DAIWAが長年培ってきた抜調子がTT調子を支える屋台骨となっています。この竿の抜き性能は実際に渓魚を掛けてみるとよく理解できます。20cmサイズの渓魚ならスッと抜けてくるのです。通常、渓魚はアワセた瞬間に首を振って抵抗します。この抵抗をいかに早く止めて、釣り人の方向に向かすことができるかが抜き性能の良し悪しを決定付けます。 「EP テクニカルチューン」は、まさに渓魚の抵抗を適度なしなやかさで抑えつつ、パワーのある胴に乗せて、いつの間にか浮かせてスッと抜いてしまうのです。 掛けて抜くスタイルは場荒れを防ぎ、1つのポイントで複数の渓魚を掛けることを可能にするばかりでなく、次から次へとポイントを探るテンポができることによって、川を歩くという渓流釣り本来の面白さも提供してくれます。 もちろん、細糸で抜ける渓魚の大きさには限界があります。大物が喰ったときはイナして取り込みますが、このときも細糸の限界を感じ取ることのできる感度の良さが、やり取りを優位に進める手助けをしてくれます。 |
「EP テクニカルチューン」は川の規模によって、あるいはポイントによって使い分け、確実なポイント取りが可能になりました。 通常は60を基本に使用しますが、支流や上部に立木やブッシュがあるような川では55、本流や淵などの大場所が多い川では70を使用することで、本流のサツキ狙い以外はこの竿だけでほとんどのシチュエーションをカバーできます。 また、一般に渓流域へのアプローチは林をすり抜けたり、藪こぎをしなければならない場合が多いものです。そんな状況での携帯性を考えた仕舞寸法55.4cmの小継仕様は強力な武器となるのです。 一見、今までの渓流スタイルと何ら変わらないように感じるかもしれない“TT釣法”ですが、仕掛けと竿を少し細くするだけで、通いなれた渓流が別の川になったような錯覚を覚えるはずです。2011年の渓流シーズン、あなたも“TT釣法”で渓流釣りの楽しさを再発見してください。
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「通いなれた渓流が別の川になったような錯覚を覚える…」最後の白滝の言葉が非常に印象的だ。普段から寡黙で実直な白滝だけに、並々ならぬ強い自信を感じとることができる。
そう、機は熟した。
DAIWAが2009シーズンから提唱し続けている“TT釣法”は「流覇III TT」で始動し、「琥珀 抜 TT」で理想形へと進化、「連山 抜 TT」でより身近な存在になった。そして3シーズン目、この深紅の「EP テクニカルチューン」の登場により、いよいよ充実の内容と結果をもたらす円熟期を迎えるはずだ。